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ガチャが世界を救う。ハピタベ誕生物語

ハピタベとは【ハピネス】+【美味しく食べる】を合わせて作った造語であり企画名称。カプセルトイが当たる躯体、通称ガチャを活用してスーパーマーケットから発生する食品ロスの削減を実現しています。

【背景】

私は1997年に新卒で地元高知県のスーパーマーケットに就職し20数年間ずっとスーパーの仕事をしてきました。朝早くから開店時間に向けて懸命に売り場作りを行います。

前日の売れ残りの賞味期限が切れたお惣菜・パン・お肉・お魚を次々とゴミ箱に捨て、新しい商品を製造し売り場に陳列していきます。今さらっと書きましたがスーパーを含めた食品小売業では年間62万㌧もの食品を廃棄しています。日本の年間食品ロスが523万㌧なので全体の12%も構成比があるのです。※1:総務省人口推計(2021年10月1日)令和2年度食料需給表(確定値)より

就職前に客としてスーパーに買い物に行っても、そんな大量な食品廃棄がある事実を知りませんでした。知らなかったので最初は困惑しました。心の底から「もったいない」と思いました。しかし開店準備は時間との戦いで、全員がピリピリしながら作業をしていく中で何も感じなくなっていったのです。

 

【転機】

2015年頃にテレビを見ているとニュースの中でスーパーが恵方巻きを大量に廃棄しているというショッキングな内容が報道されていました。

毎年2月3日の節分に恵方巻を食べる食文化が根付いたことで、その日は前日からスタッフ総出で恵方巻販売の準備し、深夜0時過ぎから恵方巻きの製造が始まります。

売り切れて販売の機会損失がないように。また、せっかく来店してくれた客からクレームにならないように。そんな思いもあり品切れしない量を製造するので当然ながら売れ残る。売れ残ると翌日捨てる。それを日本中の多くのスーパーが当たり前のようにやっていました。

そこに世間から【NO】が突きつけられたのです。入社当時思っていた「もったいない」を思い出した瞬間に、私はこの手でどれほどの食べ物を捨ててきたのだろうかと。子どもたちには「残さずに食べなさい」と言いながら、私はどれだけ職場で食べ物を捨ててきたのだろうかと。自分の行いを含めて業界を変えなければならないと思った瞬間です。

 

【てまえどり】

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恵方巻大量廃棄報道がされた頃から行政も食品ロス削減に向けて大きく舵を切りました。

食品スーパーから日々発生する廃棄の原因の一つは、客が商品を棚の奥から購入することです。手前に古いもの、奥に新しいものを陳列することをスーパーでは【先入れ先出し】と呼んでいます。

できるだけ新しい商品を買いたいと思う心は当たり前で、親子で買い物にきて子供が牛乳を棚の手前から取ろうとすると「ちゃんと奥から取ろうね」と親から指導されることもあります。そのことで【先入れ先出し】が機能せず、手前の商品が回転しないことに大きな問題があります。

この問題を解決するために、商品を手前取りしてもらおうと消費者庁・農林水産省・環境省が実施しているのが【てまえどり】運動。スーパーやコンビニで【てまえどり】のポスターを見かけた方も多くいると思います。【先入れ先出し】+【てまえどり】になれば廃棄もなくなり利益も改善にも繋がることもあり多くのスーパーがこの運動を積極的に実施しています。

私もこの企画に賛同し沢山のポスターを店内に掲示しました。お客様からも賛同の声をいただき【てまえどり】が成功すると思っていたのですが一向に廃棄が減らない。減らないどころかクレームがちらほらと現れてきたのです。

主婦の方からは、「今日食べるものなら手前からとるよ。でも私は家庭の主婦として食材を仕入れにきているのよ。だからできるだけ新しい商品を奥から購入し冷蔵庫にストックしたい。なのに、手前からとらないことが社会悪みたいなポスターを貼られていたら買い物がし辛い。だったら貼っていない店にこれからは行きたい」と。当時店長だった私はお客様が、なぜ奥からとるのか?を深く理解していなかったことに気が付きました。

コンビニは今食べたい物を買う場所なので【てまえどり】の相性はとても良いが、スーパーは主婦の仕入先と考えれば、それは中々難しい。

私は日々考えていました、クレームにならずに【てまえどり】を多くのお客様がよろこんで参加してくれるアイデアはないかと・・・

 

【アイデアの種】

私には妻と子供3人の家族がいます。子供達の運動会や音楽会の行事ごとは、私達夫婦の楽しみの一つでビデオを抱えて応援に行きます。行事が終わると頑張ったご褒美に外食することが多いのですが、私の小さな子供達は必ず特定の外食チェーン大手の回転寿司屋さんに行きたがります。

そこではテーブルの隅にある回収口に食べ終わったお皿を5枚投入すると、上部に設置されているゲームが始まります。当たりが出ると、ガチャが回ってオモチャが当たる仕掛けになっています。お子様とお店に行ったことがある方は心当たりがあると思いますが、彼らはお腹いっぱいになってもガチャを回したい欲望が勝り、余計な枚数を親に食べさそうとするのです(笑)

子供のガチャに対する執着心を活用した販促は効果があるなと思いました。

その時にふと思ったのです。【てまえどり】をしてもらいたい商品に目印のシールを貼り、そのシール10枚を集めるとガチャができると、子供に販促を仕掛けたらどうだろうって。

 

【効果と課題】

廃棄前年比24%削減!

私のアイデアを店舗スタッフ全員に説明してどうやったら実現できるか試行錯誤をすることを数ヶ月。発注精度の改善をはじめ運用方法やノウハウが次第に蓄積されてきて廃棄前年比24%削減まで達成することができました。成功事例ができたことで実施店舗を拡大したのですが、ここに大きな課題があると後でわかることとなります。

店舗拡大をしていく中で再現性の難しさが出てきました。簡単に言ってしまえば、モチベーションの問題です。スーパーのスタッフは日々の作業がびっしりと詰まっているので新しい作業が増えることに、強烈な反対バイアスがかかります。それを良い方向に変化させ協力体制をとることが店長や上長の大きな役目となりますが、そこが上手く行かないとただ単にシールを貼る作業だけが増えることになります。そして、そういった店舗は数値結果があまり良くないという共通点がでてきました。

最初の店舗と同様に、時間をかけ丁寧に一人一人に説明し一緒に試行錯誤をする時間がとても大事だと分かり、実践し改善できた店舗もありますが、残念ながら空中分解させてしまったこともあり苦い思い出があります。

 

【現在】

2022年9月、日本中のスーパー及び地球規模で社会課題になっている食品廃棄問題と食品廃棄から発生する二酸化炭素を削減して地球温暖化の抑制を目指したソーシャルビジネスの会社を設立しました。

私の経験とノウハウが詰まった企画をハピタベと名付け、これを日本中のスーパーマーケットに実装し成功させて、スーパーマーケットの未来も、地球の未来も、子供達の未来も良くしていきます。

2024年7月現在、新潟・静岡・愛知・京都・大阪・長崎・三重・富山・岐阜・愛媛の10エリア10企業の約100店舗で導入いただき大きな削減の成果が上がっています。金額ベースで全店合計2億円以上。

実際の現場ではハピタベ企画以外のスーパーマーケットあるあるのご相談も良く受けます。一般的な企画会社とは違い、20数年間スーパーマーケットの店舗運営や経営課題に携わってきた経験があるので業界独特の文化や専門用語全てが理解できます。でないと現場の課題の本質にたどり着くことはできません。発注精度・売場づくり・本部機能等々取り組む課題が沢山あり、総合力を高めることで削減効果を最大化することがハピタベ企画の真髄となります。

現場現場でレイアウトも客層も企業文化も違うこともあり型にはまったプログラムではなく、現場対応型の柔軟な発想で変化できることがとても重要だと感じています。

日本のスーパーマーケットは2万店舗以上。課題解決に向けてこれかも精力的に活動しています。働く仲間も大募集しています。皆様の力を貸して下さい!一緒に世界を救いましょう笑